宿泊業でDXが重要な理由とは?ホテル・旅館の事例を解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、今や様々な業界で必須の戦略となっています。特に宿泊業界では、DXが新たな成長と発展のカギを握っています。

インバウンド需要の急激な減少、運営コストの増大、そして労働力不足など、数多くの課題が存在します。しかし、これらの課題に対応するため、DXを積極的に取り入れることで、宿泊業界はさらなる進化を遂げることができます。

本記事では、宿泊業界におけるDXの重要性を掘り下げ、具体的な事例を通して、その効果と実践的なアプローチについて解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?デジタル化やIoTとの違い

デジタルトランスフォーメーション、略してDXとは、デジタル技術を駆使して業務、サービス、企業文化を根本から変革し、より効率的で顧客に喜ばれる形に進化させることを意味します。
これには、単に新しいテクノロジーを導入するだけでなく、ホテルの業務プロセス、社員の働き方、さらには顧客との接点をデジタル技術を用いて改善することが含まれます。

DXと混乱されがちな用語として、「デジタル化」と「IoT(インターネット・オブ・シングス)」があります。デジタル化は、アナログ情報をデジタルフォーマットに変換するプロセスを指し、業務の効率化や情報のアクセシビリティ向上に寄与します。紙の管理ではなく、パソコン・タブレット・スマホなどの電子媒体で管理するペーパーレス化などが当てはまります。

一方、IoTは物理的なデバイスをインターネットに接続し、データの収集と活用を可能にする技術です。特に宿泊業界においてはゲスト体験の向上や運営効率の最適化として、画像データを利用した混雑状況の可視化や、スマホを使ったルームキーや室内コントロールなどが該当します。

これらのデジタル化やIoTはDXの手段に過ぎません。DXはこれらの技術を活用することによる、より広範な変革を意味します。

他業界と比較した宿泊業界のDX進捗

宿泊業界はその進捗において、他の産業に比べて遅れをとっているのが現状です。経済産業省の産業別俯瞰図によると、DXに取り組んでいる企業の割合が20%未満の「第一産業群」に、農業や林業と共に宿泊業が分類されています。

出典:DX白書2023 第2部 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰

宿泊業界ではデジタルオプティマイゼーション、すなわち既存プロセスのデジタル化や効率化に焦点を当てた事例はいくつか見られますが、DXの真髄とも言えるデジタルトランスフォーメーション、つまり業務プロセスやビジネスモデルそのものの変革を目指した取り組みはまだまだ少ないのです。

ホテル・旅館におけるDXの必要性・メリット

離職率の増加やコロナ期間の採用停止に伴う人手不足
宿泊業界の欠員率は85.0%と非常に高く、これはコロナ禍の市場縮小と急激な需要回復に対する対応の遅れに起因しています。DXを通じて、自動化やロボット技術の導入により、人手不足の問題に対処し、労働負荷を軽減することができます。

参考 : 従業員の欠員率「5%以上」 企業の51.4%と半数超え 「宿泊業」「建設業」「情報通信業」で人手不足が浮き彫り | 東京商工リサーチ

新型コロナ、インバウンド等の新しいニーズへの迅速な対応
新型コロナウイルスの流行は、宿泊業界における衛生管理や非接触サービスの重要性を浮き彫りにしました。さらに、インバウンド客に対応するためには、多言語対応や文化の違いを考慮したサービスが求められます。これらの変化や新しいニーズに柔軟に対応する必要があります。

データの蓄積と活用
客室の稼働率や客層の分析、価格戦略の最適化など、データの分析と活用は宿泊業界において重要な役割を果たします。データを効果的に活用し、よりターゲットを絞ったサービスの提供が可能になり、売上の向上を目指すことができます。

ゲストエクスペリエンスの向上
デジタル技術を活用したオンライン予約、モバイルチェックイン、パーソナライズされたおすすめ情報は、顧客にとっての利便性を大幅に向上させます。

DXの導入は、単に新しい技術を取り入れること以上の意味を持ちます。それは、宿泊業界が直面する多くの課題に対する実効的な解決策であり、競争力を維持し続けるための鍵となります。

ホテル・旅館のDX事例

さまざまなツールが導入され、業務効率化や顧客満足度の向上が実現されています。

1. 清掃・配膳ロボットの導入

清掃や配膳を行うロボットの導入により、人手不足の解消と効率化を実現できます。特に配膳ロボットは、顧客との接触を最小限に抑えることで、衛生管理にも貢献しています。

名古屋プリンスホテルでは、配膳ロボットが導入され、1日あたり約100往復、3.3時間の運搬作業の代替、人件費換算で月約16万円分の効果を発揮しています。

参考 : 提供シーンが変化するホテルレストランで1日中活躍する配膳ロボットの実力とは? | Softbank Robotics

2. スマートチェックインの導入

スマートチェックインシステムは、フロントデスクでの手続きを省略し、ゲストがスマートフォン等を使用して自身でチェックイン・アウトを行うシステムです。

3. ゲストアプリ(モバイルテクノロジー)の活用

スマホを利用したキーレスエントリーやモバイルオーダー、予約システムは、ゲストにとっての利便性向上に直結。また、部屋の設備(照明、空調など)をモバイルデバイスからコントロールできるIoT技術の導入も進んでいます。

4. クラウドベースのPMS(宿泊管理システム)

クラウドベースのPMSは、顧客情報や客室情報、売上などのデータをクラウド上で一元管理し、リアルタイムでの情報共有や分析を可能にするシステムです。これにより、顧客満足度の向上とオペレーションの効率化が実現されています。

5. チャットボットによる顧客サービスの強化

24時間対応可能なチャットボットは、顧客からの問い合わせに迅速に対応。言語の壁を乗り越えた多言語対応により、インバウンド顧客の満足度も向上します。

6. レベニューマネジメントシステムの導入

AIによる需要予測を活用したレベニューマネジメントシステムは、宿泊料金の最適化を実現し、収益向上に貢献します。

ホテルゲートイン鹿児島では、レベニューマネジメントシステムの導入により、宿泊料金をいくらに設定するのか・客室を何室販売するのかの決断に必要な情報が把握しやすくなりました。

参考 : 【導入事例】目標達成に向けて工夫や挑戦 営業指標が身近に| ANDPLUS

ホテル・旅館DXのつまずきポイント

宿泊業界でのDX推進は多くのメリットがありますが、以下のようなつまずきポイントが存在します。

現場の充分な協力を得られない
日々の業務やプロセスの変更に対する現場の抵抗は大きな課題です。この解決のためには、導入担当者による現場への積極的な説明、伴走、そして段階的な推進が必要です。場合によっては、経営トップが直接現場に説明を行うことも重要です。

ツール導入で終わってしまう
デジタル化ツールの導入に満足するだけでは不十分です。導入したツールがビジネス変革にどのように繋がったのかを評価し、繋がっていない場合は改善点を見つけて行動に移すことが重要です。

まとめ

宿泊業界におけるDXは、人手不足の解消、顧客ニーズへの迅速な対応、データ活用によるサービスの最適化、顧客体験の向上など、新たな成長の機会をもたらします。

しかし、この過程では現場の抵抗やツール導入のみに終わることなど、いくつかのつまずきポイントが存在します。これらの課題を乗り越え、DXを成功させるためには、技術的な側面だけでなく、組織全体の変革が必要です。

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